ICTコラム

第10回 ウェブマーケティングのブランディング戦略2回 ~事業ドメインの再策定~

前回のおさらいより

前回、私が執筆を担当させていただいた「Vol.6」では、ウェブプロモーションにおける設計の大切さ、受託による制作の場合、クライアントとの入念なディスカッションによる要件定義が必要である旨を掲載しました。

「デザイン」の語源は、「設計」です。「デザイン」はラテン語の「designare(デジナーレ)」が由来となっていると言われています。その意味は、「問題を解決するために思考・概念の組み立てを行い、それをさまざまな媒体に応じて表現すること」とあります。

ウェブにおける設計には、どのようなテキストや写真が必要になるかを策定する「コンテンツ設計」と、そのコンテンツをページ建てとナビゲーションで切り分け、そしてマイクロ・コンバージョン(資料請求や問い合わせなどの中間成果)やコンバージョン(購買や申し込みなど最終的なゴール)に結びつけるかを策定する「導線設計」があります。

「事業ドメイン」の再策定

「事業ドメイン」とは、ビジネス領域のことを表し、再度この領域を策定することで、自社が本来アプローチすべきユーザーや、そのユーザーが求める要素、そのユーザーに対して提供できるソリューションが視えてきます。

事業ドメインは下記の要素で構成されます。

 ・ターゲット
 ・ターゲットのウォンツ
 ・自社が提供できる強みと独自性

では、それぞれの絞り込みについて説明しましょう。

ターゲットの絞り込み ~「ペルソナ」という考え方~

ターゲットは、より絞り込まれていることが重要です。「世界にたった1人、あなただけのためにこの商品、そしてウェブサイトは存在する」…それくらいまでの絞り込みができていると、ユーザーへの訴求はより強力なものになり、ユーザー自体の求心力やモチベーションもアップし、コンバージョンへつながりやすくなります。そんな「世界にたった1人」にまで絞り込んだユーザーのことを、「ペルソナ」と呼びます。

現代の社会においては、製品そのものを作り手側の論理を優先して開発する「プロダクトアウト」の考え方よりも、ユーザー目線と視点で開発を行う「マーケットイン」の考え方を優先する企業が増えており、ペルソナ設定の重要さが浸透しつつあります。

より絞り込まれた要望 ~ウォンツを知る~

よくユーザーの要望を表す表現として「ユーザーのニーズ」というキーワードが使われます。ニーズとは一般的に、「広い要望」を表しており、より絞り込んだピンポイントな要望を「ウォンツ」と呼んでいます。ユーザーの設定も、ピンポイントに絞り込んで「ペルソナ」という考え方を用いますので、そのユーザーの要望も、よりピンポイントに絞り込んでいくべき…これが「ウォンツ」の考え方です。

強みと独自性を洗い出す

よく「他社との差別化」という手法が取り沙汰されますが、これは大きな資本を持つ会社が採るべき手法です。これは、弱者が強者に勝つための戦略手法として著名な「ランチェスター戦略」の理論に則った考え方ですが、「差別化」という定義では、最終的にビジネスにおいては資本力がモノを言う戦略になってしまいます。

小さな会社は「独自性」を打ち出せる強みポイントを見出して、より絞り込んだユーザー「ペルソナ」に対して、よりピンポイントな「ウォンツ」を策定し、自社でなければ提供できない強み、すなわち独自性を提供していくことで、ニッチ市場を創り出すことができます。

事業ドメインの再策定をどう活かすか?

ではここで、事業ドメインを活かしてサイト設計を行った事例をご紹介しましょう。木材加工工房「森工芸社」様の事例です。
http://morikougeisha.com/

森工芸社様は、従来サイトで「あまり問い合わせが来ない」というお悩みを持たれていました。サイトを拝見すると、その原因は一目瞭然。「残念ながら、木工関係であるのは分かるが、何業か分からない」という状況でした。「木材販売の会社なのか、オーダーメイド家具の受注生産なのか、はたまたパーツ加工生産なのか…」どのページを観ても、「ピンと来ない」というのが正直な感想でした。

そこでまず、森工芸社様が、どんなターゲットに向けてアピールをすべきか?そのターゲットのウォンツは?自分たちがどのような強みを持っているのか?という「事業ドメイン」の再策定を行って貰いました。その結果は下記です。

ターゲット:自社の製品や企画に木材を必要とする企業
ウォンツ:自社の設備では加工できない工程は、加工済みで迅速に納品して貰いたい
強み・独自性:高度な技術を持った職人たちが、NCマシンほか多彩な設備で木材加工を一貫して施工

この事業ドメインの再策定により、森工芸社様の業態は「アイデアをカタチにする木材加工工房」という打ち出しが定まりました。そうなると、自ずと「どういう職人たちが仕事をしているか?」という“人”にフォーカスしつつ、「どんな設備でどんな加工ができるか?」「作例は?」「受注から納品までの流れは?」とコンテンツの流れが視えてきます。ウェブサイトは、ユーザーに対して必要な要素をみせて、申し込みやすく整えるだけ…至ってシンプルです。

今回のまとめ

このように、事業ドメインの再策定により、自社の打ち出し方が明確に見出すことができ、それによってサイトに必要なコンテンツが自ずと視えてくるケースは多々あります。次回は、今回の事業ドメインの冒頭で触れたユーザーの絞り込み「ペルソナ」の設定方法について詳細を解説します。

Tiger(松本 大河)氏

株式会社パイプライン代表取締役。

DTP黎明期、雑誌編集にてエディトリアル・デザイン&コンテンツ・プロデュースに目覚め、ウェブのフィールドに進出。地域活性から、上場企業の商品ブランディングまでプロデュースを行い、実績や受賞歴も多数。「ウェブ解析士マスター」としても活動し、独特の感性でのクリエイティブと運用ノウハウの両面から集客できるサイトを手掛けている。

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