電話応対でCS向上事例

電話応対技能検定研究会リポート

中谷彰宏氏特別講演「講師として必要なマインドとスキル」

電話応対の指導においては、自身の持つスキルの高さだけではなく、そのスキルをどう分かりやすく伝えるか、そして生徒のスキルをどう伸ばしていけるかという、「指導するための技術」が求められます。今回は電話応対技能検定(もしもし検定)の指導者級資格保持者を対象とした「品質向上研究会」に作家の中谷 彰宏氏をお迎えし、中谷氏の考える「指導論」をうかがいました。

2016年が明けて間もない1月8日(金)、大阪市北区の「TKPガーデンシティ東梅田」に、全国から電話応対技能検定指導者級資格保持者80名が集まり、朝10時から夕方5時半まで、ランチミーティングもはさんだ長時間の「品質向上研究会」が行われました。

この研究会は、「もしもし検定」の実際の実技問題を素材とし、審査基準に基づいてどういう評価(採点)をすべきか、受検者の応対技能がさらに向上するにはどういう指導をすれば良いか、などさまざまな角度から議論し、指導者の審査力や指導力を高めるための相互研鑽の場です。そして研究会の締めくくりとして開催されたのが、中谷氏による特別講演です。

「先生と生徒」「師匠と弟子」の違い

中谷氏は、まずご自身について「何よりも教えることが好き、だから“先生を育てること”を仕事にしている」と紹介し、続いて「先生とは」「教えるということとは」という切り口から、講演をスタートしました。

「仕事ができるという能力と、先生として優れているかどうかというのは、まったく別の問題です。何でもこなせる優秀なプレーヤーは、生徒が“なぜできないか”が分からない。逆に自分が苦労して技術を身につけた人、何度もくじけそうになった人の方が、生徒の気持ちが分かります。僕の好きな、ある英語の先生の本はとても読みやすく、お話を聞いても分かりやすい。ところがその先生は『自分は英語が好きではない』とおっしゃるのです。苦手だから、受験で英語を勉強しなければならない人に、どうすれば興味を持ってもらえるかを考えてみること。また『とんかつが嫌い』というとんかつ屋さんもいます。嫌いな自分でも食べられる工夫をする、だから美味しいとんかつになるというわけです」(中谷氏)

そして、先生と生徒という関係について、考察を進めます。

「先生と生徒という関係で技術を一方的に教えるというのは、自動車教習所のようなものです。ここで先生と生徒が、お店とお客さんという関係になってしまっては、つまらないのです。生徒がお客さんになってしまうと、『先生が“上から目線”で不愉快だ』という、へんな話になってしまう。ところで、先生と生徒によく似たものに、師匠と弟子という関係があります。これはどう違うのか?

実は師匠と弟子は、先生と生徒のように、向かい合い、一方的に技術を教えるのではなく、師匠は弟子を指導し、その指導を通じて自分も育つという関係なのです。だから指導に入る前に、互いに礼をする。師匠も弟子と一緒にお稽古し、学ぶのです」(中谷氏)

「自己肯定感」を持ち、ともに成長する

  • ここから話は「優れた先生とは?」という核心に迫ります。

    「指導を通じて自分と生徒、双方の自己肯定感が上がり、ともに成長を続けられる人が、良い先生です。自己肯定感とは、わくわくすることです。教えることでわくわくする。上手にできる、だから満足するというのは、自己肯定感ではなく、自信です。自信は一切いらないのです。うまくできなくても、楽しめること、それが自己肯定感なのです。だから皆さんには、教えることが好きになり、教えている自分を好きになってほしい。そして生徒さんも“電話応対する自分が好き”となれば、自己肯定感は上がるのです。間違えてならないのは、『ありがとうを集める』のような、見返りを求めることです。ありがとうと言われたくて電話応対の世界に入ってくる、でも実際にそんなことはほとんどなく、9割がクレームだったら、へこみます。しかし“電話応対そのものが好き、クレームを受けている自分が超好き”になったら、それが楽しさになります。皆さんに必要なのは、電話応対が楽しいと感じさせることです。何かの試験に通るとか、資格を取ることをゴールにしてはいけないのです。そんなゴールだと、合格したら目標がなくなります。楽しさがあれば続くのです」(中谷氏)

「悩みの共有」が、解決の第一歩

  • 次に中谷氏は、生徒の抱える悩みや不安について、語りました。

    「生徒さんは皆、小さな悩みを持っています。しかし『こんな小さな悩みを口にしても…』とも思っています。そうした悩みをどう感じ取っていくかが、先生の役割です。実はみんなが同じ小さな悩みを抱えているのです。それを聞き、解決策を示すのではなく、共有するのです。みんなで共有すれば、それが解決に向かいます。体格が大きく、力も強かったネアンデルタール人ではなく、なぜ、ひ弱なクロマニョン人が生き残れたのか。それは、弱かったから、知識をシェアして、環境の変化に耐えることができたからです。悩みを共有することが、すなわち学びにつながるのです」(中谷氏)

中谷氏はこうした話の節々に、ご自身の体験した武道やダンスなどの経験談を盛り込み、研究会参加者の興味、関心、そして笑いを誘いました。講演の締めくくりに設けられた質問時間で、指導上の悩み、生徒との向き合い方などについて活発なやりとりが行われたことは、中谷氏の話が参加者の心に深く響いたからにほかなりません。そしてここで得た知識や自信は、きっと参加者各人のこれからの指導に役立っていくことでしょう。

中谷 彰宏氏

1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業後、博報堂入社。CMプランナーとしてTV、ラジオCMの企画・演出、ナレーションを担当。1991年独立し、株式会社中谷彰宏事務所を設立。2008年【中谷塾】を主宰し、全国でセミナー、ワークショップ活動を行う。

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