電話応対でCS向上コラム

第59回「良い電話応対とは?」

 今更このタイトルはないだろう、と言われそうですが、この電話応対教育の大前提となる考え方が意外に曖昧であることに驚きます。研修や講演で話し合っていただいても、すっきりした言葉が返ってこないのです。何ごとによらず達成目標が明快であること、しっかりしたベクトルを持った努力こそ必要でしょう。もう一度初心に帰って考えます。

お客さまが期待することは何か

 良い電話応対とは「お客さまが満足してくださる応対」です。では、お客さまの満足とは何でしょうか。電話をかけてこられるお客さまには、必ず用件があります。その用件に的確に、分かりやすく、そして手際よく応えてくれた応対です。電話応対教育には、昔から「親切、丁寧、正確、迅速」という4原則が言われてきました。これはその通りで、この4原則が守られていれば、即ち良い電話応対と言えるでしょう。しかし、漢語を並べたこの4原則は、年を経るにつれてインパクトが衰え、当節の電話応対教育の目標とはなり難いようです。

 電話応対技能検定(もしもし検定)が始まった10年前から、私は「良い電話応対とは、この人に会ってみたいと思っていただける応対です」と言い続けてきました。そのことを常に意識して応対に当たれば、お客さまはきっと満足してくださるでしょう。

 日本にも進出しているアメリカ屈指の外食産業「TGIフライデーズ」には、サービスマニュアルというものはありません。サービスに必要なことはただ一つ、「お客さまには常にあなたの最愛の人だと思って接しなさい」とだけ教えているそうです。誠に明快で分かりやすい目標ですね。

スキル中心の日本の応対教育

 翻って日本の電話応対教育の現状を考えますと、アメリカのような大胆な目標設定での教育を行っているところは耳にしたことがありません。「敬語は正しく使われているか」「きちんと名乗っているか」「お礼やお詫びを言ったか」「クッション言葉は適切か」「お待たせしていないか」「説明は分かりやすいか」「発音・発声は聞きやすいか」など、ほとんどは細分化されたモニタリングシートを基にスキルチェックをし、評価し、それを基にきめ細かいスキル指導を行っているのが現状のようです。国内事情、企業事情がありますから、どちらが正しいと判断できるものではありません。しかし、これらのスキル項目はお客さまが電話応対者に求める主たる要件ではないでしょう。お客さまの期待は、用件に的確に、分かりやすく、手際よく応えてくれたかどうかなのです。

スキルチェックの意味するもの

 この10年来、もしもし検定指導者級試験の採点を行ってきて大変気になることがあります。それは、スキルチェック力で失敗する人が多いことです。

 繰り返しますが、スキルチェックの最も重要な条件は、電話の初めに、お客さまのニーズをしっかり聴き取り、訊き出しているかに置かなければなりません。このことが、良い電話応対の要です。ところが現実の応対を聴いていますと、最初の聴き取りが不十分なまま、マニュアル説明に入ってしまうケースが多いのです。これは、経験豊富なベテランのコミュニケーターでさえしかりです。過去の経験を基にした早過ぎる判断で、お客さまの話を十分に聴かずに捌いてしまうのです。そのことを指摘できるかどうかが、指導者の力です。安易にスキルの部分チェックで済まさないことです。

AI時代の良い電話応対者

 AIの進歩が急ピッチです。企業活動も激変し始めています。電話応対も初期応対はAIが担えるところまで来ています。今、マニュアル化できるものは、早晩AIに取って代わられるでしょう。今、指導者の皆さんが苦労なさっている敬語や言葉づかいは、苦も無くAIがクリアする日が来るでしょう。その時、良い電話応対として評価される応対とはどのような応対でしょうか。高度の業務知識を持った応対者、優れたマネージメント能力を備えた応対者、そして温かい心とホスピタリティに溢れた応対者がイメージに浮かびます。そこにあるのは、AIとは差別化された人と人との関係なのです。

岡部 達昭氏

日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定 専門委員会委員長。
NHKアナウンサー、(財)NHK放送研修センター理事、日本語センター長を経て現在は企業、自治体の研修講演などを担当する。「心をつかむコミュニケーション」を基本に、言葉と非言語表現力の研究を行っている。

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