電話応対でCS向上コラム

第17回 メディエーションを活用した集団での話し合いについて

第三者が当事者同士の話し合いを促し、トラブルを解決に導くメディエーション(調停)。前回は、人が成長し、変化していく過程を支える「変容型メディエーション」についてご紹介しました。今回は、メディエーションを活用した相談室を導入した場合を想定して、一対一のトラブルだけではなく、集団での話し合いについて考えてみたいと思います。
集団では、トラブルが顕在することもありますが、潜在する対立やトラブルなど意見の違いがあるので、これらを踏まえて、当事者同士の相互理解を促すコミュニケーションの基本を身に付けましょう。

メディエーションへの理解を深めて貰う

社内トラブルを円滑に解決するためのシステムとして、メディエーションを活用した相談室を導入した場合、定期的に社内の方から意見を聞くことも大切です。それは相談室の在り方や方向性を確認するうえでも、良い機会となるでしょう。

まずは、集まった社内の方々に、相談室の存在がしっかりと認知されているかを聞いてみましょう。存在自体は知っているが、どんなことをするところかは知らない、という方もいるかもしれません。もし一人でも利用された方がいれば、その方の感想を最初に聞いてみるのも良いでしょう。

例えばその方が「当事者の二人で話をするとギスギスするところを、両者への配慮をしながら接していただくことで、話の雰囲気が変わり、自分たちも変わることができました。辛い時もありましたが、支えられながら話をしていくことで自分に正直になれたと思います」と、相談室(メディエーション)の良さを伝えてくだされば、これまで利用していなかった方も、今後利用してみようと思うかもしれません。

人・テーマを決め集団で話し合う

さらに社内の状況を知るために、「職場において同僚・先輩・後輩に配慮するとき」というテーマで話し合いをしてみるのも良いでしょう。

同じ職場で働く以上、同僚・先輩・後輩に配慮することは誰もがあることです。その具体例を参加者の方から聞いてみるのです。

係長のAさんは「管理職として、職員の健康に注意することがわたしは配慮だと思っています。そのため、朝は職員に『おはよう』と積極的に声を掛け、その人の声やトーンや対応を見て、その元気度を測っています。ですが、最近ですと、若い人は返事すらしない人もいて困っています」と、配慮が相手に届いていない、という思いを話してくれるかもしれません。

対して若手社員のMさんは「同僚から聞いたこと、特に悪口などは、これを他に話さないというのも、配慮のひとつだと思います」と言い、続けて「営業の出先で得意先からすすめられて、お昼にビールを注がれることもあるわけです。しかしこれを同僚に話した時、翌日には上司が知っていた、ということがありました。これについてわたしは、その同僚はわたしに配慮してくれていないのだと感じました」という事例を打ち明けてくれるかもしれません。

それぞれの話を聞いたうえで、以降の話し合いのルールについて説明します。


事例を提案していただいた人に、その時の様子を質問することで、そこで起こった違和感や混乱を全員で共有する。

質問は、その出来事の適否について重点を置くのではなく、事例を通じて「配慮するとは何か」を全員が考えるうえで必要な質問をする。

質問は、はい・いいえの答えを求めるのではなく、受けた人が答えを選べるような質問にすること。

社内で相談室を設置していない場合でも、メディエーションを活用した話し合いを行うことは、社内に隠れた問題を知る貴重な機会となります。ぜひ実践してみてください。

稲葉 一人(いなば かずと)氏

中京大学法科大学院教授。東京・大阪地裁判事、法務省検事などを経て、現在本務のロースクールのほか、久留米大学医学部、熊本大学大学院などで教壇に立つ。また、日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定委員会委員・専門委員会委員を務めている。米国に留学し、ADR(裁判外紛争解決)を研究し、メディエーションの教育者・実践者である。JICAを通じた海外の裁判所における調停制度構築のプロジェクトを進め、2012年10月にモンゴル国最高裁から「最高功労勲章」を授与された。

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