電話応対でCS向上コラム

第1回 「お互いの理解を深めるメディエーション」

立場や意見が違う人同士が関わるビジネスの現場において、いさかいや衝突は大なり小なり起こり得るものです。新コーナー「トラブル解決のコミュニケーション」では、トラブルを、第三者が当事者同士の話し合いを促すことによって解決に導く手法、「メディエーション(調停)」をご紹介します。トラブル収拾の極意を学び、職場などでトラブルが発生したときに、当事者同士の相互理解を促すコミュニケーションの基本を身に付けましょう。

「メディエーション」とは?

 企業や労働の現場では、様々な年齢や立場の人が、それぞれの意見を持って仕事をしています。そうした中で、考え方や利害の対立が生じることは避けられないものです。そうなると、当事者たちの間のコミュニケーションは失われてしまいます。特に、企業においてトラブルが起きたときは、当事者だけでなく、その周りにいる関係者全員がストレスを感じ、企業活動に差し障りが出ることもあるかもしれません。そうしたトラブルの当事者たちの間に第三者が立ち会い、当事者自身の合意によって解決できるように支援するプロセスを「メディエーション(調停)」と言います。
 メディエーションは、第三者が一方的に裁定するのではなく、トラブルの渦中にいる当事者同士のコミュニケーションを復活させて、お互いの主張や思いへの理解を手助けするものです。

対話による解決を促す「メディエーション」

 そもそも、メディエーションとは、裁判によらない、中立の第三者を入れた話し合いによるトラブル解決の手法の一つです。当事者が話し合いの中で解決策を見つけていくサポートをすることがメディエーションなのです。また、それを行う人を「メディエーター」と言います。それでは、メディエーションが必要な場面とは、どういった場面なのでしょうか。
 例えば、仕事で重大なミスをしたA君が、それを理由に上司から退職を促されました。ところが、A君には退職の意思がないため、トラブルへと発展します。A君には言い分がありますが、上司は「話すことはない」の一点張りで、A君の主張には聞く耳を持ちません。両者の間のコミュニケーションは失われた状態です。このままの状態が続くと、結局A君は解雇され、最悪の場合は、A君と上司は、「解雇」と「解雇無効」を裁判で争い合うことになりかねません。そうした事態は会社にとってもA君にとっても決して望ましい事態ではないはずです。
 それを回避するために有効な手段が、中立的な第三者が話し合いを媒介するメディエーションなのです。ここでは、当事者同士が話し合うことを支援する第三者、つまり、対話の場を作り、話し合いを円滑に進めるための技術を持つメディエーターの役割が重要となります。

 本コーナーでは、企業においてメディエーションが必要な場面や、実際の進め方、またメディエーションを行って得られる効果などについて解説していきます。それらを学ぶことで、皆さん自身がメディエーターとしての基礎を身に付け、職場や仕事先におけるトラブル解決や、コミュニケーションを円滑にすることに役立ててください。

※メディエーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています

稲葉 一人(いなば かずと)氏

中京大学法科大学院教授。東京・大阪地裁判事、法務省検事などを経て、現在本務のロースクールのほか、久留米大学医学部、熊本大学大学院などで教壇に立つ。また、日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定委員会委員・専門委員会委員を務めている。米国に留学し、ADR(裁判外紛争解決)を研究し、メディエーションの教育者・実践者である。JICAを通じた海外の裁判所における調停制度構築のプロジェクトを進め、2012年10月にモンゴル国最高裁から「最高功労勲章」を授与された。

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