余韻の残るクロージング株式会社ドゥファイン

電話応対の最後の締めくくりであるクロージング。これは、電話応対技能検定(もしもし検定)の実技試験、電話応対コンクールなど、さまざまな局面で求められる要素の一つですが、漠然としているため、どうしたものかと頭を抱えている方も多いのではないでしょうか。研修でも、「具体的にどんな言葉で締めくくるのが正解なのか」と質問を受けることがよくあります。時間帯や季節、お客さまを取り巻く環境もさまざまなので、特定の正解があるというものでもありません。応対の品質を標準化・安定化するという意味では最後の一言を決める場合もありますが、マニュアルで決められた言葉ではどうしても事務的なクロージングになってしまいがちです。

お客さまに届けることができた一言

10年ほど前、ある携帯キャリアのコールセンターで働いていた時の話です。国際サービス関連の部署では、海外で自然災害や大きな事故があると問い合わせが増えるため、世界中のニュースに日々気を配っていました。その日はタイのバンコクで暴動が起こり、国際空港が封鎖される事件が起こっていました。予想通り、帰国できなくなったユーザーからの問い合わせが集中したため、私自身も電話に出ることになりました。一通りのご案内を終えていよいよ終話という時、私はどんな言葉をかけてよいものか迷いました。「お気をつけになってご帰国ください」という、通り一遍の挨拶では、この状況に対して軽すぎる気がしたのです。

その時、朝見たニュースの映像が脳裏に浮かびました。空港でバリケードに囲まれた渡航者のすぐ近くで起きた爆発。もしかしたらお客さまもあの場にいたかもしれないと考えるとたまらなくなり、咄嗟に口から出たのは、「大丈夫ですか?お怪我などはないですか?」という言葉でした。その言葉にお客さまは声を詰まらせて仰いました。「実は今、空港の近くのホテルにいるんだけど、爆発音が聞こえてきて、大人でも怖いんだよ。バンコクには仕事で来ているけど、身寄りがないから、心配してくれる人もいなくて心細かったんだ。あなたにそう言ってもらえて元気が出た。必ず、生きて帰るからね」さらに電話を切る前には、「あなたに対応してもらって、本当によかった。ありがとう。一生、あなたのところの携帯を使うからね」と。今思い出しても、涙が溢れてきます。

「たった一言が相手の心に寄り添い、企業価値までも高めることができる」ということを、身をもって実感した出来事でした。


余韻を残そうと気の利いた言葉を探そうとすればするほど、相手には伝わらないこともあります。相手の状況を慮り、相手を想ってかける“素”の言葉には、どんなに短い言葉であっても心に響く力が宿ると、教えてもらった瞬間でした。


次回の講師は、株式会社ビーグライド代表 山崎 美佳さんです。いつも、ポジティブ&アグレッシブに北海道を飛び回り、笑顔と優しさに溢れた研修で受講生を元気にしてくれる素敵な先生です
楠田 奈美氏

楠田 奈美

株式会社ドゥファイン 部長。電話応対技能検定 指導者級資格保持者。
約30年の国内並びに海外コールセンター運営経験から、現場に即した生きた研修ならびに事例を取り入れた実践的な研修を実施。コールセンターに不可欠な人とのつながりを重視し、ビジネス上の人間力を養う心の通った“愛”のある研修を展開している。

↑
PAGE TOP