電話応対でCS向上コラム

第33回 言葉かけと感情表現の重要性を知る

これまでさまざま角度からアサーションを取り上げてきましたが、今回からは人間関係を維持・回復(メンテナンス)するためのアサーションについて考えていきます。メンテナンスのアサーションは、会食やパーティなどの席や会場で行われていますが、そこでは人間関係をつくり、維持することに重点を置いたやりとりと、心のつながりをつくり維持する言葉かけがあります。今回は、メンテナンスのためのアサーションに不可欠な感情の伝え方について考えておきましょう。

生命と人間関係を支えるメンテナンスのアサーション

 私たちが交わしている日常のさまざまなやりとりを見ていくと、大きくアサーションを二つに分類することができます。課題解決(タスク)と人間関係を維持(メンテナンス)するためのアサーションです。このうちメンテナンスとは、「維持」「回復」「修復」という意味で、アサーションでは生命と人間関係を支え、維持し、回復するためのやりとりを指します。つまり、私たちはコミュニケーションによって生命と関係を維持し、それが基盤となってタスクも遂行されると考えることができます。

重要な役割を果たす「情緒の表現」と「非言語的関わり」

 メンテナンスのアサーションでは、「情緒の表現」や「非言語的な関わり」が重要な役割を果たします。私たちの日常で典型的なメンテナンスのアサーションが行われている場面は、家族や仲間と食事やお茶をしたり、お酒を飲みに行ったりする場面でしょう。これらの場面では、時間内にタスクを遂行する時のような仕上げや結論を気にすることはありません。人々が面と向かって直接声をかけ合い、心を通わせる会話が主となります。その中で重要になってくるのが、時宜に適した「挨拶」であり、必要に応じた「慰め」「励まし」「労り」「感謝」「称賛」あるいは「お詫び」などの言葉かけです。

相手に脅威や不快な思いを与えない感情表現

 このような言葉かけの際に心がけたいことが、自分の感情を正直に伝えることです。感情表現の基本には、人間は感情を持っている動物であり、しかも非常に多様で、複雑な感情を持つことができるということがあります。それを踏まえると、自分の感情を素直に受け止め、相手に脅威や不快な思いを与えないように表現すること、そして、相手の気持ちをきちんと受けとることが大切になります。感情を表現しようとする時の心得は、「感情は自分のもの」であり、自分の責任で表現するということです。

メッセージを強化する「言葉と行動の一致」

 さらに感情表現で大事なことは、言葉と行動を一致させるということです。言っていること(言語表現)とそれに伴う非言語表現とが不一致な表現を「二重拘束的な表現」と言います。矛盾した二つのメッセージで相手を身動きできなくするという意味です。棘のある優しい言葉、ふくれ面をしながら「いいですよ」と言うなどがその例です。感情表現は、言語的表現と非言語的行為とが一致して補い合うと、メッセージが強化され、より伝わりやすくなります。矛盾するとメッセージは伝わりにくいだけでなく、どちらかというと非言語的メッセージのほうが理解されて、言っている言葉は伝わりません。次号からは具体的に、ストレスを低減し、心の安定した関係をつなぐ言葉について紹介していきます。

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

平木 典子氏

日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

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